最後の旅行(六)
以前の記事で私の金銭事情に関しては記述したので粗方の予想はつくだろうが、
今回の旅行もクレジットカードを使える場面では惜しげも無く使用し、後から分割払いに変更をする算段でいた。
故に二泊三日の旅行で現金は一万円強しか所持していなかったように記憶している。
かなり少ないと思うが二万を旅行資金に取っておける程であればこのような状態になっていない為、
上記の金額で合っていると思われる。
なので事前に食事の場所や土産物などを購入する店、電車賃などクレジットカードが使えるか否かHPに掲載していなければ電話して調べたりして行程を入念に決めていた。
しかし、早くも温泉から駅への帰りのタクシー代に現金を使用する事に「損」を感じていた。
でもまぁこの頃から「希死念慮の達人」ではあったものの、
見知らぬ土地で痛い思いをするのは嫌だし、
小学生の頃に車に轢かれた経験もあるのでそこは
人命優先である。
とはいえ普段は電車やバス移動が殆どで、
終電を過ぎてタクシーに乗る事なども皆無なので、三十路ながら大人やってんなぁ〜としみじみしながら一メーターで仏生山駅に戻った。
そして高松駅に戻った時点で夕方十七時半頃を迎えていた。
夕飯は勿論うどんとその他のご当地モノを食べるつもりだったが、
高松駅周辺で絞り込むとあまりにも選択肢が多い為、宿泊先のホテル近辺にある清潔感があり落ち着いて食事が出来そうな、
レストランのような店に行こうと決めていた。
東京なら短間隔で来た電車にそのまま乗り、
二十二時台がラストオーダーが当たり前の飲食店でゆっくりと好きなもんを食えばよいのだが、
地方都市ではそうはいかない。
店が閉まるのも街が閑散とする時間も想像以上に早いし、
電車の本数だって当然少ない。
今回の目的でもある私と同じ名前の友達(姉妹)に初めて会ったのはフジファブリックのライブの広島公演だったのだが、
小鳥系ラーメンの名店「つばめ」で食べ、
店を出た後、信号の向こう側に広電が停車しているのを見かけた途端、姉妹揃って急に走り出した。
間に合う距離感ではないが、何故そんな無茶な事を・・・と聞くと、
「電車は来ないから・・・」と言った
電車の本数が一時間に一本
(時間帯によっては以下)の日常で暮らしている彼女達にとって電車は
「待っても来ないもの」なのだ。
ここは政令指定都市の中の政令指定都市なのでちょっと待ったら来るよとの旨を伝え、
(そんなこと言ってないけど)
「そうだよね・・・」となったことを今でも思い出す。
しかし、心の中では十分に一本間隔で運転している広電を、「いや、結構待つな!!」と思っていた。
電車は「待たなくても来るもの」の感覚のまま旅をすると後々大変なことになる可能性がある。
高松駅から宿泊先のホテルがある宇多津駅までは予讃線で八駅・約五十分。
最短で出発する特急いしづち松山駅行きが、
一駅二十分で着く。
三駅・二十三分で到着し、在来線と同じ料金五百五十円で行ける快速サンポートは大分後に出発する。
特急料金は千八百二十円と三倍以上の金額だが、
前述した「電車は来ない」のマインドと、
単なる旅情の高揚感でつい乗ってしまった。
このままどこか遠く松山に連れてってくれないかとも思ったが、
快適な列車の旅は定刻通り無事宇多津駅へと到着した。